意地の悪い人っていつもそうなんでしょうかね。
困った、困った。
でも、負けてばかりもいられません。

『ほくそ笑む』

僕は、迷っていた。
席を移るか、このまま読書を続けるかで。
実はこうだ。
終電近い下りの新幹線。
自由席は、サラリーマンやディズニーランド帰りの学生で
平日の夜にも関わらずほぼ満席だった。
目的地まで約2時間、立って帰るのは辛い。
席を探している人がチラホラいる。
最も近くで空いているのは三人がけの真ん中の席。
通路側は携帯ゲームに夢中の若者、
窓側はノートびっしりに何かを書いている嫌な感じのオッサン。
迷っている暇はない。
取り敢えずその席に近づく。
若者は快く足を引っ込めて迎え入れてくれたが、
窓側のオッサンは小さく「チッ!」。
一瞬 顔を見たが、すっとぼけている。
こちらも素知らぬ顔で腰を下ろし、間もなく列車は動き始めた。

荷物を足元に置き耳栓をして、早速、読書モード。
オッサンはメモをやめ、新聞を読み始めた。
新聞をわざとらしくめくっている。
しかし、こちらも鉄壁のディフェンスで殆ど音はしない。
読書のプロをナメテもらっては困る。
バッドバイブスを感じながらもひたすら文字を追いかけた。

気付くと席は空きはじめていた。
半分を過ぎた所で隣の若者も降りて行く。
チラリと横目をやるとオッサンはビールを飲んでいる。
が、次の瞬間、軽くこちらの足を押しのけるかの様に足を組み替えてきた。
“プレッシャーをかけてきやがったな”とっさにそう思った。
確かに、席はもうガラガラだ。
知り合いでもない限り並んで座っているのは気持ちが悪い。

残り時間、後40分。
席を移動すれば解放される。
しかし、オッサンのプレッシャーに負けた形にもなる。
読書を続ければ、多少窮屈ではあるが、
オッサンに“逆に”プレッシャーをかけられる。

いよいよ決断の時がきた。
僕は、微動だにもせず本を読み続けた。
オッサンが弱っていくのを感じる、でも、どく気はない。
やがてオッサンは立ち上がり他の席に移動。
そして、10分も経たない内に次の駅で降りて行ったのだ。
「ヨシ!」心の中でつぶやいた。

一期一曲

今回は“心地よさ”と“ほろ苦さ”の達人、
大橋トリオの『はじまりの唄』を。
自分の小ささを感じた時に聞くとグッとくる1曲です。